何が描かれているか
柔らかな帽子をかぶり、眼鏡を着けたピサロが胸から上を見せる。口元は長いひげに隠れ、眼鏡の上からのぞく両眼と大きな鼻が、明るい顔の中央に集まっている。
暗い上着と背景がほとんどつながり、肩の輪郭ははっきりしない。そのため帽子と白いひげが前へ浮き出す。紙の下の余白には署名や版の状態に関する書き込みも見える。
作品の見どころ
ひげは白く塗った部分ではなく、細い線の間に紙の明るさを残して表している。背景では線を何重にも交差させ、顔では短い線をまばらに置く。この密度の差が明暗を作る。
帽子の折れ目にも斜めの線が入り、布とひげで線の向きが変わる。目の周囲だけが強く暗いため、細部を拡大すると視線の存在感が増す。線の数だけで顔の立体感が組み立てられる。
制作背景
所蔵館は制作年を1890年頃、技法を亜鉛版のエッチングとする。金属を酸で腐食させて溝を作り、そこに残ったインクを紙へ移す方法で、鉛筆で直接紙に描いた肖像とは異なる。
掲載品の目録は第2状態と記す一方、画像の余白には第1状態を示す書き込みがある。この違いは残して扱い、書き込みだけで分類を決めない。具体的な刷り年も確認できていない。