何が描かれているか
二艘の舟に大量の魚が入り、男たちが網を引き上げています。左の舟では、ペテロが座るキリストの前にひざまずき、アンドレが驚いて身を乗り出します。手前には大きな水鳥の群れがいます。
これは聖書の「奇跡の漁」を題材にした、タペストリーを織るための原寸大の下絵です。完成した織物や壁のフレスコ画とは違い、人物の配置を紙の上で示す役割を持ちます。
作品の見どころ
右側で腰を曲げて網を引く人々は、腕と背中に力を込めています。キリストは静かに座っています。働く身体の勢いと、人々の驚きが、ひとつの画面でつながっています。
大きな水鳥が近景を、遠くの岸の小さな人々や建物が奥行きを示します。舟から水面へ目を戻すと、激しい身振りを、穏やかな景色が受け止めていると感じられます。
制作背景
1515〜1516年頃、教皇レオ10世の注文で、システィーナ礼拝堂を飾る織物のために作られました。下絵から布へ移す工程では左右が反転するため、ラファエロはその違いも考えて構成しました。
一連の下絵はラファエロの工房で制作され、助手も関わっています。担当範囲には議論があります。現在は英国王室コレクションに属し、V&Aに長期貸与されています。