何が描かれているか
車輪のそばに立つ若い女性が、片手を胸に置き、顔を空へ向けています。雲の切れ目には明るい光が差し、背後には水辺と建物のある穏やかな風景が広がります。聖カタリナの姿です。
伝説では、キリスト教への信仰を捨てなかった彼女は、車輪による処刑を受けることになりましたが、車輪は雷で壊れたとされます。ここでは苦痛の場面ではなく、天を見つめる姿が選ばれています。
作品の見どころ
顔は左上へ向く一方、腰と肩は別の向きへ動いています。そのひねりを、胸に置いた手、車輪に触れる指、斜めに流れる衣がつなぎ、止まった姿にもやわらかな動きを生んでいます。
緑の袖、青い服、赤と黄色の布は、強い色を使いながら互いを押しのけません。少し開いた口と上を向く目は、祈る人の内面へ気持ちを引き寄せます。
制作背景
1507年頃の作品です。所蔵館は姿勢の着想について、レオナルドの《レダ》やミケランジェロの《聖マタイ》などの研究との関わりを指摘しています。学んだ形を聖女の表現へ組み替えています。
注文主や最初の設置場所は分かっていません。個人の祈りのためだった可能性はありますが、確定した用途ではありません。静かな背景と身体のひねりを、同じ画面の中で比べてみましょう。