何が描かれているか
花に囲まれた女性が縦長の画面に立つ。題名のパンドラはギリシャ神話の人物で、人々の苦しみが世に広まる箱の物語で知られる。絵の中では大きな身振りや劇的な事件は起きていない。女性の体と植物が同じ色の層に包まれ、物語の前なのか後なのかも明示されない。題名で神話を知ったあと、画面がどれほど静かに描かれているかを確かめたい。
作品の見どころ
女性の周りには赤、青、黄の花が散り、背景と衣服の境も一部で曖昧になる。顔や手は比較的分かる一方、足元の形は色の中へ溶けていく。縦長の画面を上から下へ見ると、植物の密度や色の強さが少しずつ変わる。神話上の道具だけを探すより、女性が花の中にどう置かれたかを見ると、この絵の静かな緊張が分かる。
制作背景
メトロポリタン美術館は1914年頃の油彩画として記録する。館の解説は、パンドラの図像と第一次世界大戦前後の時代背景を結びつける可能性にも触れるが、画家の意図を一つに決めるものではない。制作年には「頃」を残し、女性の持ち物や箱の位置も見え方以上に断定しない。晩年の色彩が、神話の不安を華やかな風景の中へ置いた作品だ。