古代ローマの女性ルクレティアが、右手の短剣を胸へ向け、左手を開いている。性暴力を受けた後に自ら死を選ぶ物語であり、刺激的な場面としてではなく、決断の直前に置かれた一人の人間へ焦点を合わせて見る必要がある。
何が描かれているか
短剣は画面左から胸へ向かい、開いた左手は反対側へ広がる。二つの腕が身体を挟み、動く方向を分ける。
真珠、金色の衣、白い布は明るく描かれるが、豪華さよりも顔と手へ視線を戻す役割を持つ。
作品の見どころ
物語の前後を大勢の人物で説明せず、短剣、手、表情だけで決定的な瞬間を示す。
衣装の厚い筆触と、顔の細かな変化も対照的である。遠い古代の物語を、目の前で迷いと決断が続く身体へ置き換えている。短剣の向き、胸元、反対側へ開く手を順に追うと、二本の腕が迷いと決断を同時に表していることが分かる。豪華な衣装より、顔と手の間に残された緊張を中心に見たい。
制作背景
1664年の署名・年記がある晩年作品である。ルクレティアの物語を、名誉のための英雄的行為として美化しすぎない。
何が起きたかを簡潔に伝え、画面が暴力そのものではなく、その後の人の選択へ焦点を置くことを説明する。カンヴァスに油彩、120×101センチで、ワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートが所蔵する。
出典・画像について
画像:Rembrandt van Rijn《ルクレティア》/Rembrandt van Rijn, Lucretia, National Gallery of Art, Washington, CC0.
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートのOpen Access画像です。
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