何が描かれているか
赤い軍服のロバート・オーム大尉が馬の脇に立ち、左手に折りたたんだ手紙を持つ。身体は前へ向き、今にも馬へ乗って伝令に走り出すような緊張した姿勢である。
背後には煙、厚い雲、遠い戦闘が見える。馬の暗い身体と赤い上着が大きく重なり、開いた空を背にした顔へ光が当たる。手紙の文字は読めず、内容は確定しない。
作品の見どころ
人物を中央で静止させず、馬の首、腕、脚を斜めにつないで前への動きをつくる。顔の不安げな表情と戦場の煙が、単なる軍服の誇示ではない体験の重さを加える。
ポーズと馬の関係には、レノルズがイタリアで写したリゴッツィの壁画が参照されたと所蔵館は説明する。古い構図を借りても、同時代の軍服と北米戦争の記憶へ置き換えている。
制作背景
ナショナル・ギャラリーは1756年、オームが31歳の時の肖像とする。彼はブラドック将軍の副官として北米へ赴き、1755年の戦闘で負傷して英国へ戻った。
作品は本人の注文ではなく、レノルズが自ら制作して工房へ展示したとされる。英雄的な全身肖像を見せ、より大きな注文を呼び込む見本でもあった。手紙をブラドック戦死の報告とする説は可能性にとどめる。