何が描かれているか
緑の衣を着たマグダラのマリアが、赤い座布団の上で膝を曲げ、本を読んでいる。そばには彼女を表す香油の壺が置かれる。背後の窓には川と歩く人々が小さく見え、室内と外の景色が同じ画面に入る。左端に別の人物の赤い衣と足が残るのは、この絵が初めから一人だけの肖像だったわけではないからだ。
作品の見どころ
まず、白い布で包まれた本と、金色に光るページの端を見たい。マリアの身体は本を囲むように丸く曲がり、視線も手元へ集まる。緑の衣の厚いひだ、縁の灰色の毛皮、床に落ちる壺の影が、手で触れられそうな質感をつくる。窓辺の小さな人影まで描かれているが、主役は静かに読書する姿から動かない。
制作背景
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1435年頃の作とし、聖母子と聖人たちを描いた大きな祭壇画の右下にあった断片だと説明する。周囲の板が失われたため、今の四角い画面を元の全体と考えてはいけない。残された赤い衣や人物の一部は、かつて別の聖人たちと一緒に描かれていたことを知らせる。壺は人物の身元を読むための大切な印である。
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この画家について本で読む
ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン 情動と優美のフランドル画家
岡部 紘三 著 / 勁草書房
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