何が描かれているか
横たわるベアトリーチェのそばに、緑の衣の女性二人が布を持って立つ。赤い翼のある人物はダンテの手を取り、亡き女性へ身をかがめる。床には花が散り、左右の扉の外にも赤い鳥が見える。大きな室内に、静かな別れの場面が広がる。
題材はダンテの『新生』に基づく。翼のある人物は「愛」を人の姿にしたもので、ダンテをベアトリーチェのもとへ導く。現実の部屋を記録した絵というより、詩人が夢に見る場面として眺められる。
作品の見どころ
赤い衣の人物の手からダンテへ、もう一方の動きから横たわる女性へと視線を進めたい。赤と緑の強い色に囲まれ、ベアトリーチェの白い衣と顔が明るく浮かぶ。
二人が持つ布は、左右で形を変えながら中央を包む。床の花や扉の向こうまで見ると、人物だけでなく部屋全体が場面を支えていることが分かる。
制作背景
ウォーカー美術館のこの油彩は1869年に着手され、1871年に完成したと研究資料が記す。1856年の水彩や、後の小型の油彩の別版とは区別する。
ベアトリーチェのモデルはジェーン・モリスである。文学の人物に同時代のモデルの姿が重なる点も見どころになる。掲載画像は長辺800ピクセルの複製で、細部の鮮明さには限りがある。