何が描かれているか
少女マリアが母アンナと赤い布へ白いユリを刺繍し、父ヨアキムが奥で葡萄を剪定する。
少年の天使が鉢のユリを世話し、室内には本、ランプ、棕櫚の枝などが整然と置かれる。マリアとアンナは画面中央の机を挟んで向き合い、赤い布が二人の手元へ垂れる。父は奥の庭、天使は手前右に置かれ、室内と屋外の作業が同時に見える。
作品の見どころ
日常の手仕事の場面に多くの象徴を置き、宗教物語を家庭の時間へ近づける。
輪郭をはっきり描き、赤、青、白を鮮やかに分ける初期ラファエル前派の特徴が見える。柱、机、刺繍台の直線が画面を小さく区切り、その中へユリや本などの品が一つずつ置かれる。赤い布と青い衣を追うと、細部の多い画面でも中心を見失いにくい。
制作背景
1848〜1849年、ラファエル前派結成期に制作された。画面には同派を示すP.R.B.の文字が記された。
マリアのモデルは妹クリスティーナ、聖アンナは母フランシスで、身近な家族を宗教画の人物に用いた。家族をモデルにした事実と、画中の家族関係を私生活の再現とみなすことは別である。宗教上の人物を身近な姿で描き、象徴を添えた初期作品として区別して見る。