何が描かれているか
横長の画面が三つに分かれている。左では、本を開いた男女が顔を寄せて抱き合う。中央には二人の男性が立ち、右では同じ恋人たちが暗い空間を漂うように抱き合っている。それぞれの区画の周囲には文字が書き込まれている。
ダンテの『神曲』地獄篇に登場するパオロとフランチェスカの物語である。テートは、夫に殺された二人が地獄を漂う場面を右に描き、中央のダンテとウェルギリウスがそれを見る構成と説明する。
作品の見どころ
左の座る姿と右の宙に浮く姿を見比べたい。どちらも抱擁だが、身体を支える場所が異なる。中央の直立する二人を挟むことで、恋人たちの出来事と、それを見つめる人の立場が一緒に示される。
左の本、中央の足元、右の暗い背景へ目を動かすと、三つの場面の色や空間の差が分かる。小さな人物でも、顔の向きや腕の線が物語を伝える手がかりになる。
制作背景
1855年の水彩で、掲載品はテート所蔵のN03056である。三つの区画を一組として眺める作品なので、ここでも一作品として数えている。
画面には原典からの引用もある。文字を飾りとして通り過ぎず、人物の姿と並ぶ物語の要素として見たい。下端と中央の文字を切り取らずに掲載している。