平和を表す女性のまわりに、子どもや果物が集まる。その背後では、ミネルウァが戦争の神マルスを遠ざけている。ルーベンスが和平交渉に携わった時期の作品で、1630年にイングランド王チャールズ1世へ贈られた。
何が描かれているか
中央の明るい女性は平和を表すパクス。周囲には食べ物や子どもたちが描かれ、豊かな暮らしを思わせる。背後の武装した人物たちは、手前の穏やかな集まりとは違う動きをしている。
ミネルウァが押し返している相手は、戦争の神マルスである。何人もの神を別々に覚えるより、手前へ集まるものと、奥へ遠ざけられるものに分けると、画面の意味をつかみやすい。
作品の見どころ
これは「寓意画」、つまり平和や戦争のように形のない考えを、人の姿や物で見せる絵だ。平和を文字で説明する代わりに、食べ物、子ども、肌の明るさをまとめて目に届けている。
手前の果物から中央の女性へ、その奥の押し合う人物へと見てみよう。近くにある豊かさと、背後に残る危険が、一つの画面の中でつながっているように見える。
制作背景
1629〜1630年、スペインとイングランドの和平交渉に関わっていた頃に制作された。画家であり外交にも携わったルーベンスの、二つの活動が重なる作品である。
1630年にチャールズ1世へ贈られ、現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。この絵だけで和平が実現したということではない。平和の利点を、王にも伝わる視覚の言葉で示したものと読める。