何が描かれているか
フランス王アンリ4世が、戦車に乗って人々の集まる場所へ進んでいます。周囲には馬、兵士、空中を飛ぶ人物が重なり、上には建築が見えます。王の入城を、古代ローマの凱旋のように見せる場面です。
茶色や金色が広がり、赤や青の小さな色が人物の位置を示しています。輪郭が細部まで閉じていない場所もあります。完成した大画面とは違う、構成を考えるための油彩習作です。
作品の見どころ
見どころは、たくさんの人物を一つの流れにまとめる手早い筆づかいです。足元の人物、馬の背、王の座る位置へと目を移すと、画面の中を上昇する動きが見えてきます。
顔の似方や服の細かな模様より、人のかたまりの配置を見てみてください。建築の硬い形と、入り組んだ身体の曲線が対照をなしています。
制作背景
王妃マリー・ド・メディシスは、自分と夫の生涯を飾る絵画群をルーベンスに注文しました。この習作はアンリ4世の連作のためのものです。同じ構想を練った四点の習作のうち最後のものと、所蔵館は説明しています。
夫の連作は十分に完成しないまま、1631年に王妃がフランスから追放されました。歴史の出来事をそのまま写す絵というより、王を称える物語へ組み立てる制作過程を見られる一枚です。