2017年の公開競売で4億5031万2500ドル。公開競売における美術品の最高額である。画面では、正面を向くキリストが祝福の手を上げ、透明な球を持つ。出品時の作者表示はレオナルドだった。一方で、本人の筆がどこまで及ぶかには異論が残る。大きな価格と帰属の確かさは、同じものではない。現在は個人蔵である。
何が描かれているか
イエスが右手を上げて祝福し、左手に透明な球を持っている。サルヴァトール・ムンディ(ラテン語で「世界の救い主」)と呼ばれる、決まった形の主題だ。同じ構図の絵は、昔から何枚も描かれてきた。
手に載せた球は、世界そのものを指す。世界を手中に収めている、という意味になる。ただしこの球は水晶で、中に小さな光の点がいくつも散っている。
作品の見どころ
この絵には、二つの大きな論点がある。ひとつは、2017年11月15日にニューヨークの公開競売で4億5031万2500ドルの値がついたこと。これは2026年9月の確認時点でも、公開競売における美術品の最高額である。
もうひとつは帰属である。競売ではレオナルド作として出品されたが、専門家の意見は一致していない。レオナルド本人の手によるとする見方と、工房の関与をより大きく見る見方がある。高額な落札記録と、作者をめぐる議論は分けて考える必要がある。
制作背景
2005年、アメリカのニューオーリンズで開かれた小さな競売に出ていた。買ったのは2人の画商で、その時はレオナルドの絵だとは思っていない。板は虫に食われ、後の時代に何度も上から塗り重ねられていて、元の絵はほとんど見えなかった。
板の修復を任されたのが、ニューヨークの修復家ダイアン・モデスティーニだった。彼女は割れた板を組み直し、後から塗られた絵の具を剥がし、欠けた部分を埋めていった。その作業の途中で、修復した本人と持ち主たちは、これはレオナルドの作だと確信するようになる。