何が描かれているか
扉と格子窓のある壁が、細い路地を囲んでいます。画面に人影はなく、奥の壁には小さな灯りが掛かっています。薄茶色や灰紫色の淡い重なりが、古い壁の表面と地面の影をゆるやかにつないでいます。
一八八〇〜一八八二年の作品です。美術館は、この水彩を同時期のヴェネツィアの油彩に向けた準備だった可能性があると説明しています。
作品の見どころ
最初に、足元から奥へ延びる地面の線を追ってみましょう。右の壁の扉、左の壁の縁と合わせて見ると、小さな紙の中に、入っていけそうな道の長さが生まれます。
奥の壁は道を閉じています。明るい面と暗い開口部が交互に現れるため、少ない色でも、建物の位置や壁の凹凸をたどることができます。
制作背景
水彩と鉛筆によるこの紙の作品は、約二十五センチの高さです。大きな肖像画とは違い、街の一角を近くから静かに観察できます。
同じ初期の《ヴェネツィアの街路》では、道を歩く人物が加わります。二枚を比べると、壁や路面が作る空間だけでも街らしさが伝わることと、人物が加わることで視線の行き先が変わることが分かります。