何が描かれているか
白い布の上で裸の男女が抱き合う。男性の背中が大きく手前を占め、女性の顔と腕はその向こうから現れる。手足と布のしわが中央へ密集している。
周囲に家具や室内の奥行きはなく、白い布の外は暗い色面で閉じられる。二つの身体を美しい輪郭へ整えず、骨、筋肉、重さが触れ合う状態として描く。
作品の見どころ
男性の肩から女性の腕、絡む脚へ視線を移すと、抱擁が一つの滑らかな形ではなく、いくつもの方向へ曲がる線からできていることが分かる。
白い布は身体を目立たせる背景であると同時に、しわによって二人の動きと重さを受け止める。親密さだけでなく、互いを離すまいとする緊張まで見える。
制作背景
1917年制作。ベルヴェデーレの記録ではカンヴァスに油彩、100×170センチの横長画面である。シーレが死去する前年に描かれた、等身大に近い人物画にあたる。
登場人物をシーレと妻エディットとする紹介は多いが、公式の作品名は個人名を示さない。特定の伝記だけへ還元せず、身体の接触と画面構成を中心に見る余地を残す。