何が描かれているか
裸のシーレが大きな目をこちらに向け、口を開いている。画面左へ張り出した腕は、肘で鋭く曲がる。胴体は細長く、下の方では身体の色が薄れ、描かれた線がむき出しになる。
背景には部屋や道具がなく、紙の色が広く残る。身体のすぐ外側には白い絵具が添えられている。この白は画像の余白ではなく、作品の中で人物を囲む描写である。
作品の見どころ
顔、肘、腰へ順に目を移すと、輪郭は滑らかな一本線ではなく、細い線が重なったり途切れたりしている。身体の動きが止まった後も、線だけが落ち着かないように見える。
肌の大部分は褐色だが、口や胸、腹などには赤が使われる。全面を同じ濃さで塗らないことで、色の小さな強調が顔や身体へ視線を戻す。白い縁と肌の色の差も確かめたい。
制作背景
1911年の紙作品で、メトロポリタン美術館は水彩、黒鉛、グワッシュによるものと記録する。水彩の透ける色と、不透明な白い絵具を組み合わせた自画像である。
同館は1910年代の自画像群の一例として、骨ばった身体と線が内面の緊張を伝えると説明する。表情だけで病名や感情を断定せず、姿勢、線、塗らない場所が作る効果から見ていきたい。