悲しみ(版画)
画家 エゴン・シーレ →Sorrow (Kümmernis) / ナショナル・ギャラリー・オブ・アート
身体を折り畳んだ人物を、濃緑の細い線で刻む。1914年の原版と、死後1922年の出版を区別して見る。
何が描かれているか
人物が頭を下げ、腕と脚を身体の近くへ折り畳んでいる。肩、肘、膝が鋭く曲がり、顔は斜め下へ向く。背景には細い縦線が走り、人物の周りには紙の余白が残る。
肌を大きな色の面で塗った絵とは違い、身体の形は細い輪郭と短い線の集まりで示される。下半分の線が密に交差する場所と、顔や腕の薄い場所を比べると、濃さの違いがよく分かる。
作品の見どころ
ドライポイントは、金属の版に直接線を刻み、そこへ入れたインクを紙へ移す版画の技法である。本作の掲載画像では、濃緑色のインクが輪郭、影、背景をまとめている。
肩から下へ折れ曲がる線を追うと、身体全体が狭い形に閉じ込められて見える。《悲しみ》という題名と結びつけて読めるが、特定の出来事やモデルの心情を示す証言ではない。
制作背景
所蔵館は原版の年を1914年、掲載した刷りの出版を1922年と記録している。シーレは1918年に没したため、この紙の版画は原版と同じ年に作られたものではない。
この刷りの出版元はウィーンのリコラ社である。原作の時期と刷りの時期を分けると、シーレの線が油彩や水彩だけでなく、複数の紙へ移せる版画にも使われたことが分かる。
出典・画像について
画像:Egon Schiele《悲しみ(版画)》/Egon Schiele / National Gallery of Art, Washington / Gift of Ruth Cole Kainen, Courtesy National Gallery of Art, Washington
所蔵館のOpen Access方針によるCC0画像です。全景と紙の余白を保持して縮小。色補正・切り取り・生成処理なし。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
エゴン・シーレ まなざしの痛み
水沢 勉 著 / 東京美術
自画像、風景、人物、寓意、室内の5章で、短い生涯と表現の変化を作品からたどれる専門的な入門書です。
楽天ブックスで見る →