何が描かれているか
暗い室内に、頭を下げて手仕事をする女性が浮かび上がる。顔や胸、腕の付近にわずかな明るさがあり、衣服と周囲の暗さは溶け合う。線で細部を説明するより、明るさの違いで姿を示している。
メトロポリタン美術館は、画家の母エルネスティーヌ・フェーヴルの肖像と説明する。コンテという黒い描画材による素描であり、油彩の点描画や、版から紙へ刷った版画ではない。
作品の見どころ
人物の輪郭を一本の線として追わず、明るい部分の隣にどれほど暗い部分があるかを見たい。顔を囲む暗さや腕の薄い調子によって、身体が光を受けているように見える。
紙の表面には細かな粒が見える。館は、描画材を押す力を弱めることで、室内の乏しい光を表したと説明する。色を分ける油彩とは別に、黒の濃さを変えるだけでも豊かな空間をつくっている。
制作背景
1882〜1883年の作品で、現在はメトロポリタン美術館にある。同じ頃の《庭師》の明るい緑や青と並べると、スーラが色彩と同時に、黒と白による形の表現も探っていたことが分かる。
「点の画家」という印象だけでは、この静かな素描の仕事を見落としやすい。画家に近い人物を主題にしながら、表情の細部より光と暗さで形をつくる点も、スーラの大事な一面である。