何が描かれているか
光輪のある青年が両手を上げ、その腰へ別の男性が剣を着けています。足元にはかがむ人物が、右には楽器を奏でる人々がいます。聖マルティヌスが騎士となる場面を表した壁画です。
背後の建物はアーチで区切られ、人物たちは前の浅い空間に並びます。奥へ長く続く風景より、衣や顔、手元の動きが目に入りやすく、儀礼をそばで見ているような近さがあります。
作品の見どころ
縞模様の服、飾りのある帽子、長い衣が、列の中で少しずつ違う形を作っています。右の笛と弦楽器からは音楽のある場面と分かり、止まった画面にも賑わいが感じられます。
聖人の顔は上を向き、周囲の人々は手元や横へ視線を送っています。その違いをたどると、儀式の中心にいる人と、役目を果たす人との関係を読み取る手掛かりになります。
制作背景
アッシジの聖堂下堂にある、聖マルティヌス礼拝堂の物語画の一場面です。聖堂の案内は連作を1313〜1318年とし、ジェンティーレ・ダ・モンテフィオーレ枢機卿の注文と説明しています。
物語はこの後、武器を捨てる場面へ続きます。すでに掲載した《聖マルティヌスの武器放棄》と見比べれば、同じ聖人を、儀礼の華やかさと信仰の決断という違う瞬間で描く方法が見えてきます。