何が描かれているか
左から大天使ガブリエルが入り、右の聖母マリアへ言葉を告げる。天使の口から金の文字が伸び、聖母は本から顔を上げて身体を後ろへ引く。左右の聖人は、中央の出来事を見守るように立つ。
文字が実際に二人の間を渡るため、声の届く方向が目で分かる。天使の衣は動き、聖母の衣は包み込むように閉じる。
作品の見どころ
花瓶の百合は聖母の純潔を示す伝統的な印である。金地の装飾、薄い衣の線、植物の細部が多いが、まず中央のやり取りを追うと話が読める。飾りと物語が競い合わず、互いを支えている。
聖母の手は本を押さえ、顔は天使へ向く。読む姿から聞く姿へ変わる瞬間が、身体の小さなねじれに表れる。
制作背景
ウフィツィ美術館は1333年の祭壇画として登録し、署名にはシモーネ・マルティーニとリッポ・メンミの名がある。構想と主要部分をシモーネに結びつける見方が強いが、共同制作という事実を消さない。
もとはシエナ大聖堂の祭壇のために作られた。壁一面の《マエスタ》と違い、金の線と文字を近くで読む作品である。声を可視化した工夫から、同じ聖母の主題を別の距離で見せたことが分かる。
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この画家について本で読む
西洋美術の歴史4 ルネサンスⅠ 百花繚乱のイタリア、新たな精神と新たな表現
小佐野重利/京谷啓徳/水野千依 著 / 中央公論新社
シエナの美術とイタリア絵画の展開を詳しく扱う美術史書。二人の画家の作品を、都市や宮廷の文化との関係から読み進められます。
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