1482年頃
29〜30歳

荒野の聖ヒエロニムス

画家 レオナルド・ダ・ヴィンチ
San Girolamo / ヴァチカン美術館
この板は、かつて5つに切り分けられていた。見つけたのは、ナポレオンの叔父フェッシュ枢機卿すうきけいである。伝承では2つに割れたと言われるが、実際は5片だった。枢機卿は5片を買い集め、組み直した。死後は競売に出て持ち主が何度も替わり、1856年に教皇ピウス9世が買い取って、ヴァチカン絵画館に入った。切られ、散らばり、また1枚に戻った絵である。

何が描かれているか

荒野でひざまずく老人と、その足元に横たわるライオン。描かれているのは聖ヒエロニムスで、ヴァチカン美術館の説明によれば、神学者であり、聖書の翻訳者だった人物である。
382年から386年にかけて福音書をギリシャ語からラテン語へ、390年から405年にかけて旧約聖書をヘブライ語から訳した。西方の教会が長く使うことになる聖書の、元をつくった人だ。

作品の見どころ

ヴァチカン美術館は、この絵を「ルネサンスの巨匠きょしょうの作品の中でも最も謎めいたものの一つ」と呼ぶ。来歴には確証が無い。それでも、レオナルドの作だという点は一度も疑われたことがない、と美術館は書いている。
未完成であることが、かえって価値になっている。美術館は、この絵が画家の創作の過程についての手がかりを与えるとし、素描そびょうの質の高さと、暗い部分に薄い層を重ねていく手つきの熟達を挙げる。仕上げる前の段階で、すでに腕が見えているということだ。

制作背景

制作は1481年から1482年の間と考えられている。ウフィツィ美術館にある《東方三博士とうほうさんはかせの礼拝》とよく似ているから、というのが美術館の説明である。どちらも同じ時期に、下絵のまま置き去りにされた絵だ。
この板には、切り刻まれた過去がある。ナポレオンの叔父にあたるフェッシュ枢機卿が、偶然これを見つけた。伝承では2つに分かれていたと言われるが、実際には5つに切断されていた。枢機卿が、それを買い集めて組み直している。

作品情報

寸法
103 × 74 cm
材質・技法
板に油彩ゆさい(未完成)
所蔵
ヴァチカン美術館 絵画館 IX室
目録
Cat. 40337

出典・画像について

画像:レオナルド・ダ・ヴィンチ荒野の聖ヒエロニムス》/Hay Kranen / Wikimedia Commons
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-09-04 確認)
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