人物を片側へ寄せると、空がこれほど広くなる。晩年の小さな宗教画では、人物の周囲に広がる空や水辺が、家族の姿を静かに引き立てます。
何が描かれているか
右の岩陰に立つのは、幼子を抱くマリアとヨセフです。そばにはロバがおり、手前では翼を広げた天使が低く身をかがめています。左には空と水辺が大きく開き、その向こうに山並みが続きます。
作品の見どころ
マリアの青い外套から、左上の淡い空へと視線が抜けていきます。人物の少ない側にも、小さな鳥や雲、水面の色があり、右に集まる家族と、左へ広がる眺めが釣り合う構図です。描くものを増やす代わりに、人物の周囲を広く空ける。その余白が、幼子を守るように抱く姿を大きく感じさせます。
制作背景
1767〜1770年頃、マドリードでの晩年の作品です。メトロポリタン美術館は、聖家族がナイル川を舟で渡ったあとの場面と説明し、この風景は実際のエジプトよりもアルプスを思わせると指摘しています。大きな天井に広げてきた空が、ここでは小さなカンヴァスの中で、一家を包む静かな余白になっています。
出典・画像について
画像:Giovanni Battista Tiepolo《エジプトへの逃避》/エジプトへの逃避 — Giovanni Battista Tiepolo / Wikimedia Commons(忠実な二次元複製) / Public Domain Mark 1.0
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