何が描かれているか
右下のマリアに向かって、左から天使が飛び込んでくる。上方には小さな天使たちと白い鳥が見え、羽ばたく動きが画面を横切っている。マリアは座った姿のまま、体をねじって相手の方を向く。
間には崩れたような煉瓦の柱が立ち、左側に作業場のような空間が広がる。右の寝台や赤い布とは様子が違うため、ひと続きの室内でも場所ごとに明るさや物の密度が変わって見える。
作品の見どころ
天使の白い衣服からマリアの顔へ、斜めに目を動かしてみたい。人物を左右に分けるだけでなく、飛び込む方向と振り向く方向がぶつかり、静かな部屋に急な動きが生まれている。
床の四角い模様や奥へ伸びる梁を追うと、飛ぶ天使とは別に、建物の奥行きも感じられる。柔らかな布や羽と、硬い柱や床の形を見比べると、場面を支える二種類の線が見えてくる。
制作背景
題名は、マリアがキリストの母になることを天使から告げられる聖書の場面を指す。施設の公式記録は1582〜1587年の油彩画とし、一階広間にある作品として紹介している。
一階の大きな壁画群には、聖母の生涯やキリストの幼年時代の場面が並ぶ。単独の絵として天使の勢いを見るとともに、同じ部屋のほかの物語へ続く一場面として眺めたい。