何が描かれているか
空から聖マルコが頭を先にして急降下し、地面に横たわる奴隷の上へ飛び込む。奴隷は聖人を崇敬した罰で拷問されようとしていたが、道具が壊れて救われる。
周囲では主人、執行人、見物人が大きな円をつくる。折れた槌や道具を示す手、上を向く顔、前かがみの身体が連なり、画面中央の奇跡へ視線を集める。
作品の見どころ
聖マルコを雲の上に静かに置かず、鑑賞者の頭上から落ちてくるように描く。聖人の水平な身体と奴隷の身体が平行になり、天上の力が地上へ重なる瞬間を示す。
群衆は一人ずつ異なる反応を見せる。驚いて見上げる者、壊れた道具を確かめる者、奴隷を押さえる者を追うと、奇跡が人々へ伝わる順序を読むことができる。
制作背景
ティントレットは1548年、聖マルコ信徒会のために本作を制作した。アカデミア美術館は、奴隷が聖マルコの墓を訪れたため主人に罰せられたという伝説の場面として説明する。
大画面、急な短縮法、強い斜線によって若い画家の名を広めた作品である。宗教的な出来事を遠い過去として整えるより、群衆に混ざって目撃する事件へ変えている。