何が描かれているか
王女が赤い外套を翻して画面手前へ走り、振り返って竜退治を見る。奥では白馬の聖ゲオルギウスが槍を構え、竜と倒れた男性のそばへ突進する。
空では雲が渦を巻き、その上に父なる神が現れる。王女、聖人、神を結ぶ斜めの線が、地上の前景から遠景、さらに天上へ一気に伸びている。
作品の見どころ
物語の英雄より逃げる王女を大きく見せた点が意外である。鑑賞者は王女と同じ側へ置かれ、肩越しに遠くの戦いを見るため、恐怖と救出を身体的な距離として感じる。
赤い外套、白い馬、暗い竜が奥行きの目印になる。前景の人物を極端に大きくし、遠景の戦いを小さくすることで、縦長の画面に長い距離を押し込んでいる。
制作背景
ナショナル・ギャラリーは1555年頃、油彩・カンヴァスとして所蔵する。聖ゲオルギウスは竜へ差し出される王女を救う伝説上の軍人聖人で、ヴェネツィアでも広く崇敬された。
縦長の形から祭壇画として作られた可能性はあるが、元の設置場所は分かっていない。特定の礼拝堂を断定せず、下から見上げる構図と現在の画面を分けて考える。