1587〜1588年頃
69〜70歳頃

自画像

画家 ティントレット
Self-Portrait / ルーヴル美術館
衣装や道具をほぼ消し、老いた顔と正面のまなざしだけを残す。画家の社会的地位より、見る人との対面が前へ出る。

何が描かれているか

老年のティントレットが暗い背景の前で正面を向く。白いひげと眉、額、鼻、頬にだけ光が触れ、黒い衣と肩は背景へ溶けて輪郭りんかくがほとんど見えない。
手、絵筆、パレット、工房は描かれず、画家であることを示す道具がない。左右の目の高さや頬の形も完全には対称でなく、老いを整えすぎずに残す。

作品の見どころ

鑑賞者は顔を見ると同時に、正面から見返される。服装や室内から社会的地位を読む道が閉じられ、暗闇と顔の距離だけで一対一の対面が生まれる。
細部を均等に描かず、額、目、鼻、髭へ短い明るい筆触を置く。輪郭を線で囲まないため、顔は固定した像より、一瞬だけ光の中へ現れた存在に見える。

制作背景

ルーヴル美術館は1587〜1588年頃の自画像として所蔵する。ドイツ人金細工師で美術商でもあったハンス・ヤーコプ・ケーニヒのために描かれたと記録される。
若い頃の自画像にも斜めを向く作品があるが、晩年作は正面性と暗さを強める。死を予告したと断定するより、顔とまなざしへ表現を絞った選択として見る方が慎重である。

作品情報

材質・技法
油彩ゆさい、カンヴァス
所蔵
ルーヴル美術館
位置づけ
身体や持ち物をほぼ消し、顔とまなざしだけを暗闇から浮かべる。晩年の画家像を極端に絞った自画像。

出典・画像について

出典:ルーヴル美術館 作品記録2026-09-22 確認)
画像:Jacopo Tintoretto自画像》/自画像 — Jacopo Tintoretto / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain Mark(画像情報:2026-09-22 確認)
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