何が描かれているか
画面の下では人々が折り重なるように倒れ、体を起こした人物が上を見上げている。その先には棒に掲げられた蛇があり、さらに上方では雲と人の体が渦を巻くように広がっている。
題材は、蛇に苦しめられた人々が、モーセの掲げる青銅の蛇を見ることで救われるという旧約聖書の物語だ。蛇の形だけを探すより、人々の視線や腕の向きを追うと、出来事の中心をつかみやすい。
作品の見どころ
まず手前の大きな体と、奥に見える小さな人々を比べてみたい。近くの人物には重さがあり、遠くの群衆は明るい空間へ溶け込むように見える。同じ画面の中に、地上の混乱と上方への広がりがある。
暗い地面から明るい雲へ目を動かすと、体のねじれや斜めの線が続いていることに気づく。一人の姿だけでなく、画面全体をたどって眺めたい。
制作背景
施設の公式記録では1575〜1576年の制作とされる。ティントレットは1575年7月、上階広間の中央の天井画を描くことを申し出て、一年以内に完成させることを申し出た。
これは壁に掛ける小さな絵ではなく、広間の天井を飾る大きな作品だ。もとの設置場所を思い浮かべると、下から見上げる人へ向けた、人物の大きな動きや明暗の役割を考えやすくなる。