何が描かれているか
スザンナが水浴の前に衣を脱ぎ、鏡を見ながら足元の布や宝石を整える。肌には明るい光が当たり、静かな庭と水面の中で、本人は一人きりに見える。
しかし薔薇の垣根の手前と奥から、二人の長老が身を伏せてのぞく。垣根は画面を斜めに貫き、鑑賞者の視線も長老たちと同じ方向へ導いてしまう。
作品の見どころ
明るい身体、鏡、水面が見ることを主題にする。美しい裸身を鑑賞する視線と、物語の中で不正に監視する長老の視線が重なり、見る側を安全な外へ置かない。
薔薇、木、垣根の緑が人物の肌を囲み、赤い衣が中央を支える。奥へ続く道と鹿や鳥のいる庭は穏やかだが、左右の小さな顔を見つけると空間全体が罠に変わる。
制作背景
主題は旧約聖書外典『ダニエル書補遺』のスザンナ物語である。二人の長老は彼女を脅して関係を迫り、拒まれると姦通の罪を偽証するが、若いダニエルが証言の矛盾を暴く。
ウィーン美術史美術館は1555〜1556年頃の作品として所蔵する。官能的な裸身だけでなく、視線、偽証、女性の危険を含む物語であるため、長老の配置まで含めて読む。