何が描かれているか
ダナエが寝台に横たわり、上空の黒い雲から降る金貨を見上げる。右の老女は布を広げ、落ちてくる金貨を受け止めようとする。ユピテルが黄金の雨へ姿を変えて近づく神話である。
若い裸体と服を着た老女、白い寝具と暗い雲、開いた手と金貨を集める手が左右で対照になる。神の姿を人間の身体で描かず、光と物質の変化として見せる。
作品の見どころ
金色は小さな点として降るだけでなく、雲、肌、寝具へ広がる光になる。輪郭を線で固く囲まないため、金の雨が空気と身体へ染み込むように見える。
ダナエと老女を美と醜、若さと老いだけで分けると単純になる。二人が同じ現象を異なる姿勢で受ける構成として見ると、欲望、驚き、物質への反応の違いが見えてくる。
制作背景
ティツィアーノは《ダナエ》を複数制作した。プラドP000425は1560年から1565年の後年版で、1553年にフェリペ2世へ送られ、現在ウェリントン・コレクションにある版とは別作品である。
最初期のファルネーゼ家向け版では老女ではなくクピドが置かれた。異版ごとの差を、画家が同じ主題を機械的に複製したのではなく、人物関係を組み替えた証拠として見る。