何が描かれているか
画面の中央にマルシュアスが逆さに吊るされ、周囲の人物がその身体へ近づいています。アポロンとの音楽の勝負に負け、皮を剝がれるという古代神話の、痛みを伴う場面です。
木の幹と吊られた身体が縦の軸になり、周囲の腕や脚はさまざまな向きへ伸びています。右で考え込むように座る男性は、周囲と対照的です。行動する人と見守る人の違いが見えてきます。
作品の見どころ
肌、木、衣、地面は、くっきりした線で切り分けられていません。褐色や金色の小さな色の跡が重なり、身体が暗い空間へ溶けるように見えます。近くで見るほど、筆の動きが感じられます。
明るい肌をたどると、視線は影へ戻ります。人物だけでなく、明るい場所と暗い場所がどこでつながるかを見ると、画面の密度が分かります。
制作背景
所蔵館の教材では1550年以降の作品とされ、宮殿の案内は死の直前に完成した可能性を述べています。制作年は確定していません。細かな輪郭より色の重なりが目立つ、晩年の一枚です。
作品はオロモウツ大司教の所蔵品で、1673年に購入されました。宮殿の案内は、それ以前の来歴に不明な点があるとしています。色の重なりが作る身体と、周囲の人々の違う姿勢を入口に見てみましょう。