何が描かれているか
長いひげを蓄えた男性が、身体を横へ向け、画面の外へ視線を送っています。大きな赤い衣と首の金の鎖が目を引きます。描かれたのは、詩や風刺で知られた文人ピエトロ・アレティーノです。
暗い背景には、職業を説明する本や道具がありません。それでも広い肩、上げた顔、厚みのある衣が、人物の大きさを感じさせます。身体が占める面積にも注目してみましょう。
作品の見どころ
赤い布の折れ目には、明るい色を置いた跡が帯のように残っています。布を均一になめらかに塗るのではなく、光る部分と暗い部分の差で、重さや艶を見せていると分かります。
ひげや頬にも細かな明暗がありますが、衣はより大きな筆の動きでまとまっています。近くでは絵の具の跡、少し離れると人物の姿になる、見え方の違いを楽しめます。
制作背景
1545年初めに、アレティーノ本人の注文で描かれました。同年10月に本人からコジモ一世へ贈られたと所蔵館は説明しています。ここに掲載するのはピッティ宮に伝わるその肖像です。
所蔵館は、衣の仕上げを抑えた描き方をティツィアーノの後期の特徴として紹介しています。本人は手早い仕事だとも評しましたが、粗く見える部分も含め、人物の迫力を作る絵として見てみましょう。