何が描かれているか
狩りへ出るアドニスが右へ進み、ヴィーナスが後ろから抱きついて止めようとする。犬たちは前へ飛び出し、木の下ではクピドが眠る。遠い空では、悲劇の結末を思わせる光が広がる。
ヴィーナスの身体は左へ残り、アドニスの上半身と脚は右へ向かう。二人の身体が逆方向へ引かれ、別れたくない力と進もうとする力が同時に見える。
作品の見どころ
物語を知っていれば、狩りの後にアドニスが死ぬことが分かる。しかし絵が選んだのは死の場面ではなく、その前の別れである。結果よりも、止められない動きへ緊張を集めている。
ヴィーナスの明るい背中、アドニスの赤い衣、犬の白と茶が横方向に並ぶ。肌の柔らかさと狩猟具の硬さの違いも、愛の場と狩りの場を分ける。
制作背景
1554年にフェリペ2世へ送られた「ポエジー」の一作である。ポエジーは「詩」を意味し、神話を絵画で自由に語り直す連作を指す。
プラド美術館によれば、アドニスがヴィーナスの抱擁から離れるこの瞬間は、古典の文章にそのまま書かれた場面ではない。ティツィアーノが物語の間を絵として作った。