何が描かれているか
大きな石のアーチが幾重にも重なり、通路や階段が高い空間を横切っている。天井からは鎖が垂れ、下には小さな人物が立つ。近くの石は暗く、奥の壁や通路は淡いため、建物の中へ深く入り込むように見える。
これは実在の牢獄を訪ねて描いた記録ではない。イタリアの版画家ピラネージが考えた架空の牢獄を、ターナーが水彩で写した作品である。
作品の見どころ
人物とアーチの大きさを比べてみよう。人の姿が小さいほど、建物の高さや重さが強く感じられる。斜めの通路と丸いアーチをたどると、視線は一つの場所に止まらず、上や奥へ導かれる。
色の種類は少なくても、暗い茶色、灰色、明るい紙の地が、石の厚みと空気の隔たりを作る。周囲の二重の線も紙の上に描かれたもので、建築の場面を囲んでいる。
制作背景
メトロポリタン美術館は1790〜1799年の作と記録する。鉛筆の上に水彩を重ねた、画業の初期の作品だ。
所蔵館は、若い画家を集めて模写をさせていた医師トマス・モンローの家で制作した可能性を示している。確かな制作場所ではないが、先人の図像を学ぶ場とのつながりがうかがえる。