何が描かれているか
白くかすむ古い軍艦テメレール号が、黒い蒸気曳船に引かれてテムズ川を進む。
左上に細い月、右に燃えるような夕日があり、多くの船影が遠くへ続く。白い軍艦は帆を張らず、前の蒸気曳船から伸びる綱によって運ばれている。右手前の黒い浮標、遠くの帆柱、左上の月まで見ると、大小の船影が広い川に散らされている。
作品の見どころ
巨大だが力を失った帆船と、小さいが煙を吐いて進む蒸気船を並べる。
淡い月と赤い夕日、白い帆船と黒い曳船を対比すると、静かな別れと新しい時代の勢いが同時に見える。軍艦は輪郭が薄く幽霊のように見え、曳船は濃い色と煙で小さくても力強い。二隻の大きさではなく、白と黒、静止と推進の対比が新旧の関係を印象づける。
制作背景
1838年に解体地へ曳航された、トラファルガー海戦で活躍した軍艦を題材にし、1839年に発表した。
ターナーが曳航を実際に見た可能性は低く、報道などをもとに再構成したと所蔵館は説明する。夕日の位置や曳船の形も、象徴性を強めるため現実から変えている。実際の船は装備を外され二隻の曳船で運ばれたが、ターナーは帆柱を残し主な曳船を一隻にした。夕日の方向も現実と一致しないため、史実の写生ではなく別れを強調した再構成である。