何が描かれているか
黒い雲が大きな渦を作り、雪や光が山の斜面へ流れ込んでいる。画面の下には岩や人々が集まり、遠くへ小さな軍隊が続く。左上の黄色い太陽も、厚い雲の向こうにかすんで見える。
主題は、古代カルタゴの将軍ハンニバルが軍隊を率いてアルプスを越える場面だ。テートの解説では、象に乗った将軍も描かれているが、英雄の姿は大きな吹雪に押し包まれている。
作品の見どころ
下の人々から上の雲へ目を動かすと、人間の小ささと嵐の大きさの違いがはっきりする。渦の中心をたどると、歴史上の出来事を説明する絵というだけでなく、天候の中へ引き込まれる感覚も生まれる。
手前の岩や人物は暗く細かい一方、空は広い色の動きでつながる。何が起きているかを細部から探し、その後で全体へ戻ると、軍隊を囲む力の強さが分かる。
制作背景
本作は1812年、英国のロイヤル・アカデミー展に出品された。テートによると、大作を高く掛ける慣例に対し、目の高さに展示された。
所蔵館は、当時のナポレオン戦争との関係を示唆している。ただし古代の将軍とナポレオンを重ねる意味は解釈であり、画家が明示した説明として断定しない。