何が描かれているか
聖母が幼子を抱き、二人の天使が背後で金糸模様の布を掲げる。前景には獅子の飾りを持つ金属の泉が立つ。
幼子は聖母の首へ腕を回し、もう一方の手に祈りの数珠を持つ。足元にはスズラン、バラ、アヤメなどの花が見える。天使の掲げる布が浅い舞台のような背景を作り、母子と泉を鑑賞者のすぐ前へ押し出している。
作品の見どころ
縦19センチほどの小画面に、金属の反射、花、羽根、織物を凝縮している。小ささが細部を見るための近い距離を求める。
泉は聖母を『泉』にたとえる宗教的な言葉と結びつく。実在する物の光沢が、象徴を見つける入口になる。母子の触れ合いから泉、足元の花へ視線を下ろすと、小画面の中に親密さと象徴が順序よく収まる。
制作背景
1439年の署名と『ALS ICH CAN』の銘句があり、アントワープ王立美術館が411として所蔵する。
個人の祈りに使う小品と考えられるが、誰のために作られたかは分かっていない。注文主が分からない作品では、誰が祈ったかを想像で補わず、寸法と描かれた近さを用途の手掛かりにする。