何が描かれているか
白い布を何層にも折った頭飾りと赤い衣の女性が、暗い背景の前に立つ。身体を少し斜めにしながら、目はこちらを見る。
顔の左右差、細かな皺、口元を理想化せず描く。額縁の上下には、人物が話すようなラテン語の銘文がある。白い頭飾りの鋭い折り目が顔を縁取り、赤い衣の広い面が小さな肖像に安定した重さを与える。
作品の見どころ
銘文は『夫ヨハネスが1439年6月15日に完成した』『私は33歳』と伝える。顔だけでなく、名前、年齢、日付を一つの作品に残す。
大きな宝石や身分の道具に頼らず、頭飾りの白、衣の赤、視線で個人を記憶させる。まず目線を受け止め、次に額縁の文字を読むと、姿と記録が一体になった肖像だと実感できる。
制作背景
描かれたのは画家の妻マルガレータで、グルーニング美術館が0000.GRO0162.Iとして所蔵する。
額縁と裏面も大理石のように描かれているため、所蔵館では両面が見える形で展示される。銘文が年齢と制作日を直接伝えるため、後世の推測に頼らず、作品そのものから基本情報を読める例である。