何が描かれているか
赤い布を幾重にも巻いた頭巾の男性が、暗い無地の背景から浮かぶ。身体より顔が大きく見え、目、鼻、口、無精髭へ視線が集まる。
画面上部と下部の枠には、署名、日付、銘句が記される。人物は画面外の鑑賞者をまっすぐ見返す。頭巾の横幅に対して肩を狭く収めた構図が、顔と目線をいっそう近く感じさせる。
作品の見どころ
赤い頭巾は折り目ごとに明暗が変わり、顔の細かな凹凸と対照を作る。小さな画面でも色と視線が強い存在感を生む。
近くで観察して描いたような目の表現と『私にできるかぎり』という銘句が、画家自身の像という考えを促した。左右の目の高さや口元のわずかな違いを見ると、整った理想像より生身の表情が前に出てくる。
制作背景
1433年10月21日と記され、ナショナル・ギャラリーがNG222として所蔵する。
一般に自画像と呼ばれることがあるが、本人と確認できる同時代資料はない。このサイトでも『自画像の可能性がある男性像』として扱う。署名や銘句は作者との関係を示す重要な手掛かりだが、それだけで描かれた人物を本人とは断定できない。