何が描かれているか
聖バルバラが地面に座って本を読み、手に殉教者を示す棕櫚の枝を持つ。背後には巨大な塔と、工事を進める多数の職人がいる。
石を切る人、車で運ぶ人、足場で働く人、クレーンを動かす人まで、小さな線で描き分けられる。聖女の静かな輪郭を中心に、塔の足場と働く人々の細かな動きが背後へ扇状に広がる。
作品の見どころ
人物の衣と塔は主に細い描線で表され、通常の完成した油彩画より素描に近く見える。線だけでも布、石、遠近を変えられることが分かる。
聖女の伝説にある塔を、完成した象徴ではなく建設現場として見せる。宗教物語と同時代の仕事の観察が重なる。近くでは一本ずつの線、少し離れると塔全体の量感を見ると、描線だけで空間を作る巧さが分かる。
制作背景
1437年の署名と年記があり、アントワープ王立美術館が410として所蔵する。
色が少ないため未完成とする説と、線を見せる単色の完成作とする説がある。所蔵館も議論が続く作品として紹介する。完成か未完成かで見え方が変わるため、色が少ないこと自体を欠点とせず、両方の可能性を残して見る。