何が描かれているか
教皇インノケンティウス10世が赤い布張りの椅子に座り、本人の左手に署名の入った紙を持つ。赤い帽子と肩衣、白い袖と下衣をまとい、身体を斜めにしながら顔をこちらへ向ける。
背景、椅子、衣服には異なる赤が重なる。白い衣の広い面と紙が赤を分け、中央の顔と目へ視線を集める。指輪のある手と椅子を握る手も、人物の緊張を支える。
作品の見どころ
赤一色に見える部分も、暗いえんじ、朱色、桃色、白を含む光へ分かれる。近くでは速い筆跡が残り、離れると絹、布、皮膚の違いに変わる。
公式肖像に必要な衣装と地位の印を備えながら、鋭い視線と固く結んだ口が一人の人物を強く見せる。性格を断定するのではなく、画家が公的な姿にどの程度の緊張を残したかを見る。
制作背景
1649年末から1650年1月頃、第2回イタリア旅行中に制作された油彩画である。ローマのドーリア・パンフィーリ美術館がFC289として所蔵する。
同じ旅行中の《フアン・デ・パレーハ》と比べると、どちらも暗い背景と直接的な視線を使いながら、衣装、姿勢、画面の赤が社会的な立場の違いを伝える。