何が描かれているか
人々が集まる建物の中で、一人の女性がキリストの前にひざをついている。隣の女性は、彼女を支えながらキリストを指さす。所蔵館は、マグダラのマリアの回心の場面と考えている。
マリアの胸元では、首飾りが外れるように描かれる。館の解説では、これを華やかな暮らしから離れようとする決意のしるしとして読む。人物の心の変化を、身につけた物でも表す工夫だ。
作品の見どころ
中央の手の動きを順に追ってみよう。指さす手、支える手、胸に触れる手が、それぞれ違う反応を示している。多くの人がいても、マリアからキリストへと目が導かれる。
青、緑、桃色の衣服が、人物を区別しながら画面を鮮やかにする。太い柱や奥へ開く入口も、人々の位置関係をつかむ助けになる。色と建築を組み合わせる力が、早い時期から見える。
制作背景
1548年頃、若いヴェロネーゼが描いた作品。題材には議論があり、現在の作品名も、聖書の一節をそのまま写したものと考えない方がよい。館は、アレティーノの著作が物語の典拠だった可能性を挙げる。
マリアの立場や衣服は、16世紀の宗教的な物語の読み方に関わる表現だ。史実の経歴として受け取らず、この絵がどんな変化を身振りや色で伝えようとしたかを見たい。