何が描かれているか
聖ヘレナが窓辺の椅子に座ったまま眠り、頭を片手へ預ける。豪華な衣が身体から床へ流れ、足は台に置かれ、室内には静かな重さがある。
頭上には二人の天使が現れ、大きな木の十字架を斜めに運ぶ。窓の外の淡い空と天使の身体は軽く、下の眠る聖女と夢の像が上下で対照になる。
作品の見どころ
椅子、腕、衣の折れが下向きの力をつくる一方、十字架と天使は斜め上へ浮かぶ。眠る身体の重さと夢の軽さを、同じ室内へ無理なく重ねた点を見たい。
深い赤、金、白の衣を広い面で置き、顔は小さく静かに残す。劇的な夢の物語でも叫びや大きな身振りを使わず、沈黙と色の関係で聖なる知らせを表す。
制作背景
伝説では、ローマ皇帝コンスタンティヌスの母ヘレナが夢のお告げを受け、エルサレムでキリストの真の十字架を発見した。本作は発見そのものではなく、夢の段階を描く。
ナショナル・ギャラリーは1570年頃の作品として所蔵する。ヴェロネーゼへの帰属が疑われた時期もあるが、現在は比較的早い時期の本人作として一般に受け入れられている。