何が描かれているか
若い狩人アドニスがウェヌスの膝で眠り、女神は扇で風を送る。クピドは猟犬の一頭を抱えて止めるが、別の犬は立ち上がり、狩りへ向かう時が近い。
二人の身体は木陰で大きな三角形をつくり、足元には弓矢と犬が集まる。遠くの風景は明るく開き、静かな休息の場と、外へ進む狩りの世界を分ける。
作品の見どころ
眠るアドニスの重さを、ウェヌスの腕と膝が支える。女神の手は優しいが、犬と弓矢は別れを予告し、現在の静けさに未来の死が入り込んでいる。
肌、赤い布、犬の毛、金属の飾りを描き分けながら、人物の輪郭を柔らかな光でつなぐ。クピドと犬の小さな動きが、大きな二人の止まった姿と対照になる。
制作背景
主題はオウィディウス『変身物語』に由来する。ウェヌスはアドニスへ危険な獣を狩らないよう忠告するが、若者は出発し、猪に襲われて命を落とす。
プラド美術館は1575〜1580年頃の作品として所蔵する。同館の《ケファロスとプロクリス》と対になる構想だったと考えられ、愛と死を扱う二つの神話が対応する。