何が描かれているか
画家と娘ジュリーが向き合い、強く抱き合う。娘の腕は母の首の周りへ回り、母はその背を包む。二人の顔は近く、背景は暗い。抱擁の形が画面の中心になり、服の赤や白も体の動きに沿って流れる。親子を並べて紹介する肖像ではなく、その関係を身振りで見せる自画像である。
作品の見どころ
ジュリーは1786年の別の絵より大きく描かれ、母の膝にただ抱かれる子ではない。こちらへ向く顔と、母へ寄せる体の向きが同時にある。腕が作る輪の内側に二人の顔が収まり、目は自然にそこへ集まる。赤い帯と明るい肌は暗い背景で際立つ。母娘の気持ちを一つの言葉に置き換えるより、身振りと視線がどう結ばれるかを見たい。
制作背景
ルーヴル美術館は1789年の板に油彩、所蔵番号INV 3068と記録する。1786年の親子像はINV 3069であり、同題でも別の作品だ。この絵が描かれた年にフランス革命が始まり、画家はのちに国外へ移った。ただし抱擁を離別の予告として作ったと断定する史料は、ここで確認した所蔵記録にはない。作品を当時の親子像として見たうえで、後の生涯と分けて考えたい。
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この画家について本で読む
画家たちのフランス革命 王党派ヴィジェ=ルブランと革命派ダヴィッド
鈴木杜幾子 著 / KADOKAWA
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