なぜ同じ絵が2枚あるのかは、いまも分かっていない。分かっているのは金の話である。材料が見積もりより高くついたとして、レオナルドたちは注文主の信徒会に増額を求め、争いになった。ナショナル・ギャラリーは、それが通らず彼が1枚目を他所へ売ったらしい、と書く。祭壇に納まったのは、この2枚目のほうだった。洞窟の岩も水も、世界が造られたばかりの姿として描かれている。
何が描かれているか
岩に覆われた洞窟の中で、聖母マリアと、幼い洗礼者ヨハネと、天使が、幼子キリストを囲んでひざまずいている。キリストは手を上げて、彼らを祝福している。
植物が体に触れている。ナショナル・ギャラリーは「葉がヨハネの膝とキリストのつま先をくすぐる」と書く。岩は四方から人物を囲い込む。
作品の見どころ
無原罪の御宿りを記念する祭壇画の一部である。この祝日が教皇に公認されたのは1477年。主題の定型がまだ固まっておらず、ナショナル・ギャラリーは、レオナルドが自由に構図を作れたと説明する。
洞窟を選んだことにも理由がある。無原罪の御宿りを支持する人々は「世の初めより前に、私は創られた」という聖句を根拠にした。だから場面は、世界が造られたばかりの時に置かれている。岩も水も、まだ固まりきっていない世界のものだ。
制作背景
同じ主題のルーヴル版に続く2枚目だが、なぜ2点あるのかは確定していない。1490年代初めの文書からは、材料費と報酬をめぐり、レオナルドたちが注文主の信徒会と争っていたことが分かる。
修復調査では制作が複数期に及んだことが分かった。1490年代初めに描き始め、1499年のミラノ離脱で中断。1506年に呼び戻され、契約に指定された群青などを加えたと考えられている。