笛を吹く人の横で、白い服の女性が楽譜を持っている。《完全な調和》という題名に対し、周囲の人はそれぞれ別の方向を向く。音楽のまとまりと、人と人との少しずつ違う距離を見比べてみたい作品だ。
何が描かれているか
白い服の女性と横笛を吹く男性が、画面の中央付近に寄り添うように配置される。手前には縞模様の服の人物が座り、後ろには背を向けた人物たちがいる。右上には庭の彫像も見える。
舞台は室内の演奏会場ではなく、木の茂る庭。楽器と楽譜が場面の中心をつくる一方、すべての人が同じ方向に集中しているわけではない。それぞれの向きが、小さな集まりに複雑さを与えている。
作品の見どころ
まず明るいスカートを見てから、楽譜、笛、吹く人の顔へと目を移そう。白い布の広がりと細長い楽器の線がつながり、演奏する二人の関係が読み取りやすくなっている。
手前の人物は低く、奥の人々は立っている。高さの違いによって、狭い画面にも前後の層が生まれる。「調和」という題名を唯一の答えとせず、誰が誰へ注意を向けているのかを探す楽しみがある。
制作背景
1719年頃、クリの板に油彩で描かれた作品で、現在はロサンゼルス・カウンティ美術館に所蔵される。紙や布ではなく、木の板を支持体とする比較的小さな絵である。
優雅な庭園の集まりを見せる雅宴画の世界に、音楽が加わった一枚。音そのものは聞こえなくても、笛を構える腕や楽譜を支える手から、そこで流れる時間を想像できる。