丘の上から水辺へ、華やかな服の男女が連なっている。愛と結び付くシテール島を舞台にした、現実と夢の間のような絵だ。これから島へ向かうのか、そこを去るのか。旅の方向を決めずに見ると、しぐさの違いが目に入る。
何が描かれているか
右の木陰には身を寄せ合う男女がおり、中央では立ち上がる人や歩く人が見える。左へ目を移すと、人の列が水辺へと続いていく。上空の翼のある子どもたちは、ここが普通の外出だけではないことを知らせる。
シテール島は愛の女神と結び付く場所で、この絵も恋の世界を舞台にしている。ただし、人々が島へ出発するところなのか、島を離れるところなのかは、一つに決めて説明しないほうがよい。
作品の見どころ
右から左へ、座る、立つ、歩くという姿の変化を追ってみよう。並ぶ人物を別々に見るだけでなく、動きが少しずつ変わる一続きの流れとして眺めると、横長の画面を自然に読み進められる。
手前の服や草は比較的はっきりし、遠くの山や空は淡い色に溶けている。にぎやかな集まりでありながら、人物が風景の中に小さく収まるため、遠ざかる時間のような静けさも感じられる。
制作背景
1717年、ヴァトーが王立絵画彫刻アカデミーの会員となる際に提出した作品。神話上の大事件を英雄だけで見せるのではなく、庭園の男女の交流を中心に据えている。
ここに掲載するのはルーヴル美術館所蔵の1717年作。ヴァトーには同じ主題の別作品もあるため、題名が似ていても同一の絵とは限らない。所蔵館と制作年を合わせて確認しておきたい。