何が描かれているか
左にはこちらを向いて立つ女性、中央には扇を持って座る女性、右には後ろ向きの女性がいる。それぞれの衣服や動きを調べた素描だ。背景のない紙の上に異なる姿が並び、服の向きが姿勢を伝える。
中央では顔や胸元を黒い線が支え、スカートには白い明るさが入る。左右の人物は赤い線の比重が大きい。比べると、描き込みの密度も違う。
作品の見どころ
赤・黒・白の三色のチョークを使う方法は、トロワ・クレヨンと呼ばれる。赤い輪郭、黒い影、白い光を手がかりに眺めてみよう。それぞれの線を追ってみよう。
右の背中から裾へ続くしわと、中央の扇の細い線を比べてみよう。大きな服のひだと小さな手の動きが、一枚の紙に同居する。紙の茶色と白いチョークの明るさの違いも見どころだ。
制作背景
ゲティの現行目録は1715〜1716年頃とする。2021年の同館展覧会では1716〜1717年頃と紹介されており、年代には幅がある。いずれも、ヴァトーが三十代前半に描いた習作として扱える。
所蔵館によれば中央の女性は、1717年の《シテール島への巡礼》に使われた。習作を蓄え、後で人物を選んで絵を組み立てる制作法の一例だ。完成した油彩と、扇や身体の向きを見比べてみたい。