庭で向かい合う踊り手と、右の小さなバグパイプを奏でる人物。華やかな題名でも、ヴェネツィアの実際の祭りの記録とは限らない。踊りを囲む人々の視線から場面を考えてみたい。
何が描かれているか
白く光る衣装の女性が中央で踊り、左の男性が向かい合っている。右の奏者はミュゼットという小型のバグパイプを抱える。周囲では人が座ったり話したりし、奥には横たわる女性の彫像が見える。
《ヴェネツィアの祭り》という題名は、所蔵館によれば1732年の複製版画に現れる。画家が生前にそう呼んだかは分かっていない。題名から、特定の街で開かれた祭りの記録と決めないようにしたい。
作品の見どころ
中央のスカートには細いひだが走り、光が小さく割れている。左の男性の暗い赤と右の奏者の黄色を目印にすると、踊りを囲む輪が見えてくる。姿勢も比べてみよう。
奥の人物は彫像へ手を向け、手前では人々が互いに顔を寄せる。誰が誰を見ているかをたどると、踊りの周囲にも出来事が感じられる。
制作背景
1718〜1719年の油彩。所蔵館は左の踊り手を友人の画家ニコラ・ヴルーゲル、右の奏者をヴァトー自身と解釈する。中央女性の名前は推定にとどまる。人物の同定と、実際の集まりの記録は区別したい。
庭の交流や恋の気配を描く雅宴画の一例だ。白い服から黄色い服、奥の彫像へ目を動かすと、空想の庭に人が集まる仕組みが見えてくる。踊り手、奏者、見守る人を眺めてみよう。