何が描かれているか
曇り空の下、テムズ川を小舟や帆船が行き交う。右手には岸へ寄せた船が重なり、縦に伸びる帆柱と斜めの帆桁が画面へ入り込む。遠い対岸には低い建物が帯状に続く。
手前の船着き場には半透明のような人物が集まり、水面には空、船、建物の色が細長くにじむ。遠くの赤い帆と岸の赤褐色が、灰青色の広い画面に小さな目印をつくる。
作品の見どころ
船を一隻ずつ説明するより、帆柱の線、水面の横線、雲の帯を組み合わせて川の広がりをつくる。右端で船を大胆に切ったため、景色が画面外にも続く感覚が生まれる。
人物と遠景は輪郭を固めず、薄い絵具の重なりで空気に溶ける。後のノクターンほど色は絞られていないが、対象の細部から全体の色調へ関心が移る途中を確認できる。
制作背景
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは1863年頃の作品とする。題名の「リーチ」は川のまっすぐ伸びた区間を指し、バタシー周辺から見たテムズ川の交通と対岸を扱う。
19世紀のテムズ川は産業と輸送の場だった。ホイッスラーは煙や汚れを社会問題の説明へ直結させず、現代都市の船、建物、霞を新しい風景画の素材として組み立てた。
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この画家について本で読む
ランドスケープとモダニティ トマス・ガーティンからウィンダム・ルイスへ
小野寺 玲子 編/大石 和欣ほか 著 / ありな書房
イギリス風景画と近代を考える論集。ホイッスラー初期のテムズ河風景を扱う章があり、港の絵からノクターンへ進む背景を深く読めます。
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